きっとずっと住みたくなる! 岐阜移住のススメ
Why Move to Gifu City?

Profile

冨田 太基さん (↑イラスト左)
FOLT代表/デザイナー/施設や店舗などの空間設計や什器の設計・制作を行っている。
安藤 美優さん (↑イラスト右)
一宮市の会社でテキスタイルデザイナーとして働く。柳ケ瀬でシェアハウス生活を満喫中。
岐阜市への移住者2人による対談企画です。冨田太基さんは埼玉県の出身。大垣市の大学院を経て岐阜市で暮らし始め、現在は店舗の設計などを行う事務所を経営しています。安藤美優さんは岡山県出身で、東京の美術大学を卒業。現在は岐阜市で暮らしながらテキスタイルデザインの仕事をしています。さて、どんなトークが飛び出すのでしょうか?
まちにコミットしている感覚。

―本日は柳ケ瀬のカフェBUMS(バムス)さんにおじゃましています。こちらのお店は、冨田さんが設計されたそうですね。
■冨田:そうです。僕が会社員時代に設計させていただいたお店です。
■安藤:私もこのお店によく来るんですよ。
■冨田:そうなんですね。僕も自分が設計したお店だからよく来るんですが、最近若い世代のお客さんが増えているそうですよ。お客さん同士がちょっと会話したのをきっかけに仲良くなることも多いみたいです。
■安藤:いいですね! 私は近くのシェアハウスに住んでいて、バムスでピザをテイクアウトして映画パーティしたいね、ってルームメイトと話していたところでした。
■冨田:シェアハウスはどこにあるんですか?
■安藤:柳ケ瀬商店街の中にあって、今は女性3人で住んでいます。部屋の窓を開けるとアーケードを見下ろす感じになるんです。なかなか見られない景色でけっこう気にいっています。
■冨田:どういうきっかけで住み始めたんですか?
■安藤:私は東京の大学を卒業したあと一宮市の生地メーカーに就職して、最初は会社の近くに住んでいたんです。就職して間もない頃は一宮の暮らしが新鮮でしたが、限られたコミュニティの中で生活していたので、「ちょっと寂しいな」と思い始めました。ある頃から、休日にふらっと一人で柳ケ瀬に遊びに来るようになって、いくつかのお店に通ううちに知ったのが、シェアハウスの存在です。「一部屋空いているらしいよ」と教えてくれた人がいて、そこから少しずつ気になり始めました。
■冨田:まちとつないでくれる人がいたんですね。
■安藤:シェアハウスを内見させてもらって住んでいるメンバーにも会い、そこから1週間くらいでもう、引っ越すことを決めました。住み始めたらみんないい人で、楽しく暮らしています。冨田さんはどういう経緯で岐阜に来られたんですか?
■冨田:僕は関東の大学を卒業後に大垣市の大学院に入り、その後は大垣の建築設計事務所に就職しました。当初は大垣でルームシェアをしていたのですが、一緒に住んでいた人が引っ越すことになって、そのタイミングで岐阜に引っ越したんです。でも、最初は岐阜に全然知り合いがいなかったので、しばらくは自宅と会社を往復するだけの生活でした。
■安藤:岐阜の生活が楽しくなるきっかけがあったんですか?
■冨田:大きく変わったのは、柳ケ瀬商店街にあるTAKURO Coffee(タクローコーヒー)の店舗のデザインをしたことです。店主のタクローくんと知り合ったのはある飲み会で、大人数で飲んでいたけど飲み足りなくて、その後2人で飲みに行くことにしたんです。好きな音楽の話とかをしている時に「僕、お店をやりたいんですよね」という話をしてくれて。それがきっかけで実際にデザインさせてもらうことになりました。その後もタクロー君がまちの人とすごくつないでくれて、お店に行くたびに知り合いが増えました。そこからどんどんまちにコミットする感じになりました。
■安藤:まちにコミットしている感覚は、すごくよく分かります。特別な感じではなく生活しながらまちに関わっている感じですよね。
■冨田:そうそう。日常感があるというか。安藤さんも柳ケ瀬のお店はよく行きますか?
■安藤:はい。朝よく行くのは、パン屋さんのロンドンです。朝8時から営業しているから、会社に行く前にパンを買っていくこともあります。家の近くにおいしいパン屋さんがあることが、個人的にはすごく幸福度が高いです。
■冨田:分かります。
■安藤:土曜日はパンシノンにもパンを買いに行きます。柳ケ瀬に住んでいると、ランチを食べるにしても選択肢がたくさんあって、徒歩圏内が本当に充実しています。
夢を語りながらお酒を飲む。

―シェアハウスのメンバーとは普段どう関わっていますか?
■安藤:ルームメイトとは予定が合った日にご飯を食べに行く感じです。あとは、たまたま帰ってくるタイミングが一緒だったりリビングですれ違ったりした時に会話をします。「いつも誰かと一緒」みたいな感じだと疲れてしまいますが、ちょうどいい距離感で関わることができます。冨田さんは普段、どんな過ごし方を?
■冨田:僕は普段は事務所にこもっていることが多いですね。仕事が終わった後、遅い時間から飲みに行くこともあります。あと、僕はけっこう自転車が好きで。ロードバイクではなくて、シティバイクみたいな自転車にゆったり乗っています。友人にも自転車を勧めて一緒に東京まで買いに行き、みんなで組み立てて持って帰ってくるとか。
■安藤:えー! 面白そう!
■冨田:そうこうしているうちにメンバーが増えてきて、この前は板取の方まで6人くらいで走り、途中で川に入ったりしました。バムスでピザを買って自転車で走り、どこかで食べるとか、そういうゆったりとした楽しみ方をしています。飲食店をやっている知り合いが多いので、みんなスキルがあるじゃないですか。プロがコーヒーを淹れてくれたりして、贅沢な時間ですよ。スキルを持った人が集まって何かをする、というのが楽しくて。たとえば縫製ができる人がいてバッグを作ったら面白いな、とか。そういう夢を語りながらいつもお酒を飲んでいます。
■安藤:楽しい! すごくいいですね。
■冨田:「岐阜が楽しいから来てよ」と言って、東京から友人を呼ぶことも多いですね。一度来た人は、岐阜の良さを分かってくれます。おいしい食べ物もあるし、東京よりもずっと、まちと人の距離が近い。東京のお店で店主さんと仲良くなるって難しいけど、岐阜は一人と仲良くなればどんどん関わりが広がっていくので楽しいと思います。
■安藤:私は東京の大学に行っていたのですが、今は東京に住みたいという気持ちが全然なくなっちゃって。
■冨田:分かる!
■安藤:今も遊びには行くんですが、やっぱり住むとなるとちょっと無理だな、と思うようになりました。

―お二人のお仕事の内容についても教えてください。
■安藤:私が勤めている会社では、生地の企画から生産までを行っています。私は元々、工場の技術者として生地を生産する仕事をしていたのですが、最近は新しい生地の開発とか企画・設計を行うことが増えてきました。自分の仕事を分かりやすく言うと、テキスタイルデザイナーという呼び方になると思います。
■冨田:僕はいま岐阜市内に事務所を構え、店舗の設計や空間デザインをしています。店舗などの大きな空間から、イベント用の家具や什器まで、いろんなものを作っています。
■安藤:たとえば「お店の内装を作ります」となった時、どこまでを冨田さんが担当するんですか?
■冨田:実際に空間を作るのは大工さんなどの職人さんがやってくれるので、僕は図面を描いたり「どうやって作るか」を考えたりする役割になります。
■安藤:ものを作るって面白いですよね。私は「自分で手を動かして作りたい」という気持ちがあって、この仕事を選んだところがあります。就活をしていた時はアパレルブランドで企画をする仕事とか、洋服を作る仕事も探していたのですが、よくよく自分の考えを整理していくと、自分の手を動かして「ものを触っている」という感じがいいなと思って、もう少し川上で生地を作る仕事をしたいと思いました。
■冨田:奥が深そうな仕事ですね。
■安藤:そうですね。生地は本当に奥が深いです。大学でテキスタイルデザインを学んできたのですが、会社に入った時は「私って何も知らなかったんだ」というところからのスタートでした。今は7年目ですが分からないことも多く、毎日実験をしている感じです。たとえば、「糸をどれだけ撚る(よる)か」によっても味が大きく変わるし、加工をちょっと入れるだけでも全然違う。染色屋さんとコミュニケーションを取って「こういう生地を作りたいんですけど、どういう加工がいいですかね?」と相談したり、試行錯誤しながら何回も試作品を作っている感じです。
■冨田:僕の仕事も似ているところがあって、図面を描くだけではなく職人さんと仲良くなっていろいろ相談することがすごく楽しいです。僕たちが描く図面って、結局コミュニケーションの手段でしかなくて。図面に描き切れないところは職人技で対応していただく部分があり、「表に見えていないところはこういう風に作った方がいいよ」などと教えてもらうことも多いです。 デザイナーってものづくりの現場よりも一歩引いた場所にいるイメージがありますが、そうではなくて「中に入れてください」という感じで関われると面白いですよね。安藤さんが働いている繊維業界も含め、東海地方はものづくりの会社が多いから、そういう踏み込んだコミュニケーションが取りやすいと感じます。
自分で扉を開けるか開けないか。
My Favorite Spot 「事務所の屋上がお気に入りです!」
―県外に住む人に、岐阜の魅力を知ってもらうためには何が必要だと思いますか?
■安藤:ネット上にも情報がありますが、それだけでは伝わり切らないというか…。私はやっぱり「人」だと思うんですよね。そこにいる人と直に接して、コミュニケーションを取る中で伝わることの中に本質があると思います。一方的に受け取った情報とかスマホの画面の中で見つけた情報だけでは伝わらないものがある気がします。
■冨田:結局、自分で扉を開けるか開けないかだと思うんです。「お店の人にしゃべりかけてみる」とか、扉を一度開けてみるとすごく面白いことが待っていると思います。
■安藤:すごく分かります!
■冨田:僕たちが今いるバムスも、ある時SNSをきっかけに一度流行って、パッとお客さんが増えたらしいんです。でも、そういう人たちはリピーターにはならない。きっと「いい写真を撮ってSNSに上げる」ということに幸せを感じて、渡り鳥みたいにいろんなお店に行っているのだと思います。でも本当は、その先に次の展開があるんですけどね。
■安藤:一歩踏み込んでみると、全然違う世界が広がりますよね。
―まず一歩踏み込むことが大切なのですね。お二人の場合、その行動が「移住」につながったのでしょうか。
■冨田:僕は「移住しよう」と思って岐阜に来たわけではないので、移住という言葉自体がピンとこないというか…。
■安藤:そうそう! 移住って思ったことがないですよね。移住と言うと「環境を全部変えて新たな生活をスタートする」みたいな感じで、何かハードルが高くなってしまうと思います。
■冨田:僕は「気づいたら岐阜にいた」みたいな感じでしたよ。
■安藤:私も休みの日にちょくちょく柳ケ瀬に遊びに来るようになって、次第に縁がつながっていって住むようになりました。それもやはり、人とのつながりのおかげだと思います。ネット上の情報だけを見て突然「住もう」と思ったわけではないです。一宮で一人暮らしをしていた時は毎日が家と会社の往復で、「もう少しいろんな人としゃべりたい」という気持ちが強かったんです。だから、柳ケ瀬でいろんなイベントに参加できることがうれしくて、少しずつ通うようになりました。私が参加した読書会や映画会などのイベントは5人くらいの少人数だったので一人でも参加しやすく、自然と輪に入っていける雰囲気がありました。
My Favorite Spot 「仕事終わりの『のはら湯』が最高!」
―改めて、岐阜の良さはどんなところにあると思いますか?
■安藤:自分が商店街の中に住んでいるから特にそう感じるのかもしれないですが、ちょっと歩いたら素敵なお店があって、ちっちゃい映画館や本屋さんもあり、おいしいパン屋さんもあるという環境が魅力的です。遠出しなくても、心を充実させられる場所が身近なところにたくさんあります。それに、金華山も近いし長良川もあって、自然がすぐそこにあるじゃないですか。気軽に歩いて行ける距離にそういう場所が詰まっているので、日常に充実感があると思います。“日常”がポイントですね。
■冨田:僕も同じですね。自然との距離が近く、日常を楽しめるまちだと思います。あと、岐阜は意外と尖ったお店とか尖った人がいるのが面白いです。作家さんやものを作っている人も多いですよね。「地方だから東京には負ける」という感じではなく、地方にいながら戦っている人がたくさんいます。人としてカッコいい人や、尊敬できる人。そういう人たちと関わるワクワク感があることが、岐阜の魅力だと思います。

―では最後に、お二人の今後のイメージを教えていただきたいと思います。
■安藤:今後ですか? 私が知りたいくらいです(笑)。「自分はこれからどうするつもりなんだろう?」って。今までを振り返っても、自分が東京を離れて地方で就職するとは思っていなかったし、さらに岐阜のシェアハウスで暮らすなんて1ミリも思っていませんでした。「何があるか分からないな」とずっと思いながら生活しています。だから、その時々で「こうしたいな」という気持ちがぼんやりとあったとしても、結局人との出会いによってどんどん変わっていく気がします。
■冨田:やりたいこともね。
■安藤:そう。やりたいことも短いスパンで変わっていくものだと思うので、全然先が読めないですね。仕事も同じで、辛抱強く続けていたら自分にできることが増えてきて、「自分がやっている」という実感がどんどん湧いてきました。経験値が増えていく中、やりがいを持って仕事に取り組んでいます。
■冨田:僕はとにかく「いいものを作りたいな」というのがあって、東京に行くとかではなく、岐阜にいながらそれをやるということが面白いと思っています。あとは、みんなのハブになるようなお店づくりに関わりたいです。特に自分たちくらいの年代の人がお店を出すお手伝いをしたくて、そこに面白さを感じています。
■安藤:いいですね。冨田さんにいろんなお店を教えてほしいです。
■冨田:それならこの近くにおすすめのお店が。今から行きます?
投稿日:2025.12.24 最終更新日:2025.12.24

