Live 03 / 地場産業
曾祖父がつくったお醤油屋さんは、幼い頃から大好きな場所だった。山川華奈子さんの実家は、1943年創業の山川醸造。美濃の伝統的な調味料である「たまり醤油」や「豆味噌」をつくり続けてきたが、近年、安価な濃口醤油に押され、岐阜でもたまり醤油を口にしない人が増えてきたという。そんな中、社長である父の晃生さんが1990年代から取り組んできたのが、小売向け製品の開発である。「アイスクリームにかける醤油」などの商品を生み出し、新たな客層を開拓してきた。
東京の会社で働いていた華奈子さんが岐阜に戻ったのは、そんな頃である。古いものがどんどん失われていく時代。当初、華奈子さんの中には、たまり醤油の需要が先細っていくことへの諦めもあったそうだ。しかし実際にお客さんと接するうちに、根強いファンがいることを知った。「『ここのお醤油を50年使っているよ』と言ってくださるお客様もいます」。
木の桶で2年もの時間をかけて熟成させる、昔ながらの製法。温度や湿度などの管理を機械化せず、天然の環境で手間をかけて豊かな旨味を生み出す。社員になって初めて仕込みの現場を見た華奈子さんは、「こんなにすごいことをやっていたんだ」と感動を覚えたそうだ。
「今日初めてうちの醤油を口にした人が、50年後も使ってくださるかもしれません。その時のために仕事をしていきたいと思います」
未来のお客さんに届けるための味を、華奈子さんは大切に守ろうとしている。
■ 山川醸造
1943年創業。木桶を使った天然醸造で美濃の伝統的な「たまり醤油」や「豆味噌」を醸造する。また、1990年代から「たまごかけごはんのたれ」「アイスクリームにかける醤油」など小売向け商品の開発にも力を注ぐ。華奈子さんは、山川醸造の4代目にあたる。
【住所】岐阜市長良葵町1-9
【お問い合わせ】058-231-0951
投稿日:2021.12.27 最終更新日:2023.12.07