iju interview

Vol.8(野口真名矢さん、彩花さん)

これまでの人生で培った力を活かし、岐阜のまちに新たな風を。

野口真名矢さん、彩花さん

野口真名矢さん、彩花さん

憧れていた岐阜市で、今の自分の集大成を。

JR岐阜駅から南に歩いて15分ほど。岐阜市加納の閑静な住宅街のなかにある「HAT Burger & Coffee Shop」。店主の野口真名矢さんは、岐阜県羽島市出身。瑞浪市内にある短大を卒業後、愛知県一宮市のアメリカンダイナーで飲食業の修業を積み、2021年に念願の自店をオープンしました。

野口真名矢さん

真名矢さんが飲食業を志すようになったのは、短大生時代。趣味のダーツに没頭していた頃のことです。趣味が高じて、プロとしてダーツの大会に出場するほどの腕前でしたが、プロ選手としての収入だけで生計を立てていくことは想像できず、「ダーツバー」の経営に興味を持ったことが飲食の道に進むきっかけとなりました。ダーツの腕前はプロ級だったものの、飲食に関する知識と経験が全くなかったため、短大卒業後はアメリカンダイナーに就職。そこで、飲食業のノウハウだけでなく、「フレア・バーテンディング」と呼ばれる、ボトルやシェーカーを使ってカクテルをダイナミックに提供するパフォーマンスの技術も学びました。

厨房にはさまざまなお酒やシロップが並んでいます。

厨房にはさまざまなお酒やシロップが並んでいます。

「たまたまオーナーがフレアバーテンダーだったので、その技術を教えていただいたんです。その頃はダーツではなく、フレアの大会に出場していて、お店で働くかたわら、結婚式や企業のパーティなどでもパフォーマンスを披露していました」。

アメリカンカルチャー好きの真名矢さんのこだわりがインテリアにも現れています。

アメリカンカルチャー好きの真名矢さんのこだわりがインテリアにも現れています。

しかし、新型コロナウイルスの影響で勤めていたアメリカンダイナーが休業することに。結婚式やパーティーでのパフォーマンスもめっきりなくなり、これを機に真名矢さんは短大時代から夢見ていた飲食店の開業に踏み切ります。当初の夢は、ダーツバーを開くことでしたが、コロナ禍で夜営業は厳しいと考え、昼営業を主軸とした形態を模索。これまでに学んできたことの現時点での集大成としてたどり着いたのが、アメリカンテイストなハンバーガーショップでした。
もともと、料理だけではなくファッションや音楽も含めてアメリカンカルチャーが大好きだという真名矢さん。そのこだわりは、お店のBGMやインテリアにも現れています。

オリジナルで考案した、インパクトあるビジュアルのハンバーガー。

オリジナルで考案した、インパクトあるビジュアルのハンバーガー。

看板メニューのハンバーガーは、ビーフ100%の肉をつなぎなしで手ごねしたパティを、市内のパン屋で特別につくってもらった全粒粉のバンズで挟んだ自信作。「ジャンクなイメージを覆したい」という思いで、素材やボリュームなど、こだわり抜いて作り上げました。コーヒーも、ハンバーガーに合わせ、肉の脂をすっきりと流してくれる酸味の強いオリジナルブレンドを提供しています。

お店づくりはたくさんの人の力を借りて

見渡す限りの田んぼが広がる羽島市南部で生まれ育った真名矢さんにとって、子どもの頃から岐阜市は一番身近な都会で憧れのまちでした。自分の店を開くという夢を抱いたときも、その場所は岐阜市と決めていたといいます。市内でも飲食店が立ち並び、人通りの多い柳ケ瀬商店街や玉宮町ではなく、あえて岐阜駅の南側の住宅街に店を構えたことには理由がありました。

ボリューム満点のバーガーを慎重に組み立て、仕上げにナイフで整えます。

ボリューム満点のバーガーを慎重に組み立て、仕上げにナイフで整えます。

「岐阜市にはまだハンバーガーショップが少なくて、競合しないことが分かっていたので、繁華街から外れてもお客さんは来てくれるという確信がありました。だから、駅からは近いけど、家賃が安いこのエリアにしたんです」。
知人の紹介でこの物件と巡り合い、友人に協力を仰いで、3ヶ月にわたってほとんどDIYで店内を改装。同時に住まいも探し、店がオープンする2ヶ月前の2021年5月に、妻の彩花さんとともに一宮市から岐阜市に移住しました。

店舗オープン前からグッズを制作して販売。現在も500円で購入することができます。

店舗オープン前からグッズを制作して販売。現在も500円で購入することができます。

さらに、お店がオープンする前からInstagramで改装の様子を発信し、そこでも協力者を募りました。すると、想像を超える反響があり、改装作業を手伝う人が集まっただけでなく、当時開業を応援してくれる方向けに販売していた2,000円のステッカー(現在は500円で販売)は次々と応援者の手に渡っていきました。言わば、アナログのクラウドファンディングです。

注文が入ってから、じっくりとパティを焼き上げます。

注文が入ってから、じっくりとパティを焼き上げます。

当時はただ必死に情報発信をしていたという真名矢さんですが、今振り返れば「かっこわるいところも含めて全てをさらけ出したこと」が良かったのではないかと話します。「自分が一番頑張るということは前提ですが、力が足りない時には躊躇せずに他人を頼りました」。その結果、「HAT Burger&Coffee Shop」は着実にファンを増やし、周囲の期待が高まるなか、2021年7月にオープンを迎えました。

オープン後の評判は上々。若い世代だけでなく、近所に住む地域の方も足を運んでくれています。

移住と開業から1年、
お店も暮らしも次のステージへ。

岐阜市への移住、そして店のオープンから1年余りが経ちます。普段は会社員として働く彩花さんも、時には店のサポートに入りながら一緒に日々を歩んできました。そして、2022年9月には二人のもとに新たな家族がやってきます。彩花さんは熊本県出身ですが、コロナ禍ということもあり、里帰りはせずに出産される予定です。

会社員の彩花さん。休日には厨房に立ち、お店を手伝うこともあります。

会社員の彩花さん。休日には厨房に立ち、お店を手伝うこともあります。

8年前、就職を機に熊本県から一宮市へ移り住んだ彩花さんは、移住するまで愛知や岐阜のことは何も知らなかったといいます。でも、一宮市に移住後は、たまに岐阜市を訪れることがあり、結婚後に岐阜市に住むことに関しては全く抵抗はなかったそう。

野口彩花さん

「私が生まれた場所はすごく田舎だったので、岐阜市は暮らしやすいと感じています。岐阜出身ではないので公園や遊びに行ける施設がわからなかったり、不安も多いですが、出産や子育てに関する情報は、お子さま連れのお客さんや職場の同僚に教えていただいています」。

お子さんの誕生という大きな変化を楽しみにしながらも、真名矢さんにはまだまだやりたいことがたくさんあります。そのうちの一つが近所の寺の敷地内にカフェをつくること。友人である寺の住職から相談を受け、加納地区を盛り上げるという意味でも、ぜひ実現させたいと前向きに検討中です。一方で、自分一人では実現が難しいことも感じています。

「寺カフェやキッチンカー、やりたいことは盛りだくさんです。このお店をオープンしたことがゴールではなく、これからもおもしろいことにどんどんチャレンジしていきたいですね!」。(真名矢さん)

「正直、このお店をオープンするときはとても不安だったけど、1年が経って軌道に乗ってきたので、今はやりたいことがあるのならやったらいいじゃん!と思います」。(彩花さん)

HAT Burger&Coffee Shop

野口さんご家族はきっと、これからも力を合わせて、楽しみながら、お店も暮らしも新たなステージへと進んでいくことでしょう。


HAT Burger&Coffee Shop
住所:〒500-8474 岐阜市加納本町6-2
営業時間:11:30~20:00
定休日:火曜
Instagram:@hat.burger.coffee

Share!

この記事をシェアする