iju interview

Vol.17(西口久美子さん)

ハーブを身近に。
スモールスタートで叶える自分の店。

ココカラインタビュー14西口久美子さん

フランスでの出会いをきっかけに、
Iターンで岐阜市へ。

岐阜市長良にあるフランス語教室の一角に、2023年10月、小さなハーブティーの店「HERBOSTHÉ(エルボステ)」がオープンしました。現在は木、金、日曜日の週3日営業し、40種類ものハーブの量り売りやオリジナルブレンドティーの販売を行っています。

手書き文字が描かれた木の看板に、丁寧に手入れされた植木。物語の世界から飛び出したようなかわいらしい店構えにうっとりしながらドアを開けると、店主の西口久美子さんが笑顔で迎えてくれます。
ココカラインタビュー14
店内には常時30〜40種類のハーブがずらりと並びます。

奈良県出身で、大学で4年間フランス語を学んだ後、卒業後は服飾関係の仕事に就いた西口さん。学生時代にお菓子屋さんでのアルバイトを経験したこと、元々お菓子作りに興味があったことから、製菓を勉強するために思い切って退職。ワーキングホリデー制度を利用しフランス・パリに渡り、約1年半、製菓を学びました。

帰国後は地元の奈良にある洋菓子店に就職。4〜5年ほど経った頃、パリ滞在中に出会った、岐阜市の洋菓子店「PATISSERIE PÊCHE(パティスリー ペーシュ)」の店主・長屋百々香さんから一緒に働かないかと誘われたことがきっかけで、2016年に岐阜市に移住しました。

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幼い頃から、花火が見える家に住むことが夢だったという西口さん。「長良川の花火大会を間近に見ることができ、夢が叶いました」

服飾関係の仕事をしていたことから、アパレル業が盛んな岐阜市には会社員時代に出張で何度か訪れたことがあったという西口さん。“ほどよく田舎”なところや大阪や名古屋へのアクセスがよい点が、地元の奈良と似ているという印象を持っていました。実際に生活することでその魅力をより実感できているといいます。

「まちのすぐそばに長良川や金華山があり、公園もたくさんあって、自然とまちの距離が近いところが気に入っています。また、ご近所さんに野菜をいただくことがあったり、人の良さも魅力ですよね。岐阜市の人は優しく、真面目で誠実な方が多いなと思います」

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さらに、県内では最も公共交通機関が充実しているのも岐阜市の魅力。生活をする上で車が必須と言われがちな岐阜ですが、西口さんの基本的な移動手段は徒歩と自転車です。

「岐阜市に引っ越してきた後に車は手放しました。徒歩と自転車で大体の用事は済ませられるし、どうしても必要な時には友人に頼んで乗せてもらっています」

自身の体調の変化から生活を見つめ直し、
お菓子作りを離れハーブの道へ。

「PATISSERIE PÊCHE」で働きながら、岐阜市での生活が7年目に入った頃。お菓子は大好きだったけれど、年齢による体調の変化でアトピーを発症するようになってしまったことを機に「一度お菓子の仕事を離れ、新しいことをしたい」と思い始めたという西口さん。

もともとアロマテラピーや植物療法に興味があった西口さんは、ハーブティーのお店を始めることを決意しました。

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「日本ではまだ“ハーブ”と聞くと敷居が高いイメージがありますが、フランスでは漢方のように取り入れられる民間療法なんです。薬を処方してもらわずに、予防を兼ねて気軽に取り入れられるので、自分自身の肌の調子の改善にもつながるといいなと思い、学び始めました」

初めはパティシエとしての経験を生かし、ハーブティーとスイーツを提供するカフェを始めようと考えていましたが、予算に見合う物件を探すのに苦戦。そんな時、岐阜市に移住して以来通っているフランス語教室「Tout ça(トゥーサ)」の講師Laurentさんからの提案を受け、教室の一角を間借りしてハーブティーの小売からスタートすることになりました。

「初めての開業だったので、小さく始めたいと思っていました。いずれはカフェもできたらとは思っていますが、カフェの運営に追われて、本来伝えたい植物療法のことが疎かになってしまうのではという懸念もあったため、ハーブに集中できる環境を作れたことは結果的に良かったです」
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岐阜市に住まいがあることや、喫茶文化が根付いている地域性から“岐阜市で開業するものいいな”と思うのは自然な流れだったといいます。

2023年3月に「PATISSERIE PÊCHE」を退職し、開業に向けて本格的な準備をスタート。8月からは岐阜商工会議所が主催する創業スクールに参加しました。

「すごく勉強になりましたし、同じ志を持つ仲間と情報交換ができるのはありがたく、励みになりました」と西口さん。

スクールの参加者とは今でも連絡を取り合っているといいます。
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約8ヶ月の準備期間を経て、2023年10月29日にオープンを迎えた「HERBOSTHÉ」。
お客さんはフランス語教室の生徒さんや創業スクールの参加者が多かったものの、そこから「こんなお店ができたらしいよ」と口コミで広がり、今では色々な人がお店を訪れるそうです。

また、開業後も岐阜市が主催する起業家交流イベント「GIFU IGNIGHT」に参加するなど、積極的に交流を広げています。

より快適な毎日を過ごせるよう、
岐阜の人々の暮らしにハーブを。

オリジナルの調合でつくるハーブのブレンドティーは、冷え性の改善が期待できる「Meguri(巡り)」、女性の不調に寄り添う「Elle(エル)」、自律神経の調整に働きかける「Totonoi(整い)」など、おもにハーブの効能からイメージした名前が付けられており、中には“お腹いっぱい”を意味する岐阜弁「おなかポンポン」から名付けられた「Ponpon」というかわいらしいネーミングのブレンドティーも。
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日常の悩みや身体の不調を相談すると、おすすめのハーブティーを紹介してくれます。

「多くの人が日々の忙しさに追われて、身体の不調に耳を傾ける機会が少ないのかなと感じます。暮らしにハーブを取り入れることで、自分を振り返るきっかけになれば嬉しいです」
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HERBOSTHÉで扱う商品はオーガニックのものにこだわり、全てフランスから直輸入で仕入れています。国産ハーブは生産量や品質が安定せず価格が高いものが多いのに比べて、ハーブ文化が浸透しているフランスのハーブは安価で高品質。より気軽に、暮らしにハーブを取り入れてもらうにはフランス産が最適だといいます。

今後はハーブの地産地消を目指し、国産ハーブの仕入れも検討していくそう。特に岐阜県には、滋賀県との県境にまたがり「薬草の宝庫」と呼ばれる伊吹山があります。古来より地域に根付く薬草文化を再び盛り上げたいと考えている西口さん。岐阜の人々の暮らしにハーブ文化を浸透させたい。西口さんの想いは、週3日の小さな店から一歩ずつ広がっていきます。


HERBOSTHÉ(エルボステ)
住所:岐阜県岐阜市長良187-7
営業日:木・金・日
営業時間:10:00〜17:00
URL:https://www.herbosthe.com/
Instagram:@herbosthe

実際のインタビューの様子はこちらの動画をご覧ください。
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