Living in GIFU CITY 03
東京の設計事務所で経験を積んだ後、アメリカの大学院で学んだ伊藤さん。その後はアメリカやスイスの大学で教職に就きながら、国内外でプロジェクトに携わってきた。世界を舞台にした、建築家としての華々しい経歴。その一方で常に自身の根本にあったのは、地元の岐阜のようなまちへの思いだった。「『誰のために建築をするか』を考えた時、最終的にいつもたどり着くのが、岐阜にいる自分の家族や友人のような人の姿でした」。
地方のまちは東京ほど便利ではないが、人・モノ・空間の豊かで多様な『資源』にすぐアクセスできる。こういう場所ならより自由でおおらかな創作ができるのではないか。伊藤さんがそう感じたきっかけの一つが、スイスの大学教員として岐阜に関わった経験である。学生が取り組む設計課題の対象に岐阜県の自治体を選び、学生たちとともに滞在した。「地元の木を使って地元の大工さんが建物を建て、地元の人の手でケアしていく。その仕組みまでを含めてデザインを提案しました。海外の学生の真剣な提案を聞き、地域の人たちは今まで気づかなかったまちの魅力を発見できたようです。小さなコミュニティだからこそ、そうした化学反応のようなものが生まれたのだと思います」。
世界の国と日本の地方をダイレクトに結ぶことで生まれる、新たな可能性。その拠点として選んだのが岐阜市である。2020年夏に帰国・引越し、ビルの一室をリノベーションしたアトリエも完成。この場所だからこそ生み出せる建築を、世界に向けて発信していく。
■伊藤 維さん
伊藤維建築設計事務所代表。2008年に東京大学建築学科を卒業後、設計事務所に勤務。2014年にハーバードデザイン大学院に進む。その後スイス連邦工科大学助手などを経て、2020年に帰国。建築家として岐阜市と東京の2拠点で活動中。
投稿日:2021.01.18 最終更新日:2023.12.07