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鼎談 「岐阜と音楽。いま、何が起きている?」

Gifu and Music.
What’s Happening Now?

亀丸 一弘さん、泰斗a.k.a.裂固さん、DJ MOTIVE さん3人

Profile

泰斗a.k.a.裂固さん(↑写真中央)
岐阜県出身。
ヒップホップアーティスト。第9回「高校生ラップ選手権」の優勝を皮切りに「SCHOOL OF RAP「SPOTLIGHT」優勝、2016年「KING OF KINGS」本戦出場等、フリースタイルラップバトルシーンの最前線に躍り出る。2017年、テレビ朝日『フリースタイルダンジョン』の2代目モンスターに選出される。音源では、2016年にデビューEP『AUTOMTICFUN』のCD1500枚を完売させ、続いてのシングル『KEEP ON RUNNIN′』はiTunes HIPHOPチャート1位獲得。2018年には1st FULLALBUM『TIGHT』、2020年には2ndALBUM『omniveres』をリリース。
2022年MCバトル「KING OF KINGS 2022 GRANDCHAMPIONSHIP FINAL」で優勝。


DJMOTIVEさん(↑写真右)
deadbundy/P.C.M/DJ/PROCUCERHIPHOP,TECHNO,ELECTRONICAなど縦横無尽な作風が特徴。クリスチャンディオールのweb用ショートムービーにmomigaiの「whales」「senaka」が使用される。3rdep「seaside」はUKのダウンロードサイトHTFRのチルアウトチャート3位。別名義のユニットdeadbundyも広く支持を集める。ドイツのレーベルHELL YEAHより12’「Lorenz/deadbundy」発売。2020年、裂固とアルバム「omniverse」、ジャズトランペッター近藤等則との共作“ZEN”発表。2022年よりテクノアーティストの名義である“P.C.M”開始。REMIX、CM音楽、サウンドトラックなどコラボレーション多数。また、2023年には、岐阜スゥープスのアリーナで使用されるBGM、イメージトラックを制作。


亀丸一弘さん(↑写真左)
高校卒業後、大阪に移住。
1993年岐阜に戻り1996年STAB 4 REASONを結成。1999年STAB 4 REASON AND THE STYLESを結成。2000年レーベルTWISTED PRODUCTIONSを設立。2006年スタジオSOUND STUDIO PRIMEを各務原市にオープン。2008年DUB 4 REASONを結成。2011年ライブハウス柳ヶ瀬ANTSを岐阜市にオープン。2012年スタジオSOUND STUDIO PRIMEを岐阜市に移転オープン。2013年、株式会社アンツ・エンタテインメントを設立し代表取締役に就任。2015年、MUSIC MAGAZINE誌の特集「ベスト・アルバム2015レゲエ(日本)」部門ベスト5の第2位にDUB4REASONの2ndアルバム「ANARCHY AND DUB」が選出される。2017年、岐阜のアーティストによる岐阜県讃歌「BIG UP MYTOWN」を発売。


初めてのライブは、
何もできなかった。

笑顔を見せる亀丸 一弘さん

―亀丸さんがバンド活動を始めたのはいつですか?

■亀丸:高校1年だから、38年前ですね。岐阜のライブハウスといえば老舗のCASPERさんで、まずはそこからかな。
その後、大阪での生活を経て岐阜に戻り、1996年にSTAB 4 REASONを結成したのが、いま続いているバンドの最初の形です。

―その当時、岐阜の音楽のカルチャーは
盛り上がっていましたか?

■亀丸:終わってた。大阪でバンドをやってきて、岐阜に帰ってきたら何もなかったですね。だから、自分でやっていくしかない。やっていく以上は、岐阜を面白いところにしなくてはいけない。僕らはそういうつもりでいろいろやってきました。ギターに手をつく亀丸 一弘さん

―MOTIVEさんはどんな形で音楽活動を始めましたか?

■MOTIVE:僕は高校を出てから10年くらい名古屋にいて、名古屋でずっとDJをやっていたんです。最初はロックとかテクノでDJを始めて。そのうち名古屋でクラブジャズというシーンが流行りだして、そのシーンにどっぷり浸ってトラックを作り始めました。岐阜に帰ってきた時、岐阜のことを何もわかっていない状態でたまたまSTAB 4 REASON AND THE STYLES(当時の亀丸さんのバンド)のライブを見て、「うわ、すごいカッコいいバンドだな」と思いました。2000年頃だったと思います。

■亀丸:そんな話初めて聞いたな(笑)。今まで言ったことないやん。微笑むDJ MOTIVEさん

―裂固さんが岐阜で音楽と関わるようになったのはいつですか?

■裂固:2013年頃ですかね。当時、大垣に住んでいたのですが、友達の影響でヒップホップを知って、その友達がステージに立つ時にCLUB BLOCKという柳ケ瀬のクラブに初めて行きました。そこでライブとかヒップホップの空気感を知って、「自分もちょっと音楽をやってみたいな」と思いました。ants(亀丸さんがオーナーを務める「柳ヶ瀬ants」)は、ラップを始めたてぐらいの時からライブさせてもらっています。でも、初めてライブをした時は、何もできなかったですね。antsではけっこう悔しい思いをしました。

■亀丸:最初はみんなそこからやもんな。

マイクを片手に持ち、パフォーマンスを行う泰斗a.k.a.裂固さん

ライブハウス柳ヶ瀬ANTS

(ライブハウス柳ヶ瀬ANTS)

若い子たちに夢を持ってほしい。

―MOTIVEさんがdeadbundyというバンドを始めた経緯も教えてください。

deadbundyが演奏する様子

■MOTIVE:初めはずっと部屋で曲を作っていて、毎年のようにCDを出していました。一人でずっと作っていたので曲がどんどんたまっちゃって。

■亀丸:それはすごいな。

■MOTIVE:それをしていた時、OFT(OUR FAVORITE THINGS)というフェスに行ったら、今のdeadbundyのボーカルが出ていて知り合いました。その人がやっていたライブハウスによく遊びに行くようになって、「なんか録ってみようよ」みたいな。遊びで録っていたらアルバムができて、というのが始まり
です。

■亀丸:僕がMOTIVEを知ったきっかけは、人から「MOTIVEというすごい人がいるんですけど知ってます?」と言われて、「そんなにすごい人がいるならちょっと会ってみたいな」と思ったことです。そうやって自然とつながっていきますね。

■裂固:僕はantsでライブをしていたから、亀さんのことは当然知っていたけど、なかなか自分から声をかけられなくて。その後、「高校生RAP選手権」で優勝するなどしていろんな人に認知してもらえるようになった時、G2さんというレゲエのアーティストの方の企画で、岐阜のアーティストを集めて「BIG UP MYTOWN」という曲を作ることになりました。その時に、音を作ってもらったのが亀さんのDUB 4 REASONです。その時にやっとあいさつができました。顎に手を当てて考えるDJ MOTIVEさん

―BIG UP MYTOWN」は、FC岐阜のオフィシャルパワーソングということですが、この曲に対する思いも聞かせてください。

■裂固:2017年に、岐阜という名前ができて450年の節目で作られたのがこの曲です。「岐阜をアゲるんだ」という気持ちを示す意味合いが、僕の中ではありました。僕は元から「岐阜を盛り上げる」と考えていたわけではなく、ラップが好きという理由で始めたんです。でも、やっていく中で自分の視野が広がり、「岐阜に対してできることがあるかな」と考えるようになりました。

■亀丸:僕も一緒で、音楽をやり始めた時は自分が好きだからやるわけで、岐阜がどうこうとかとは考えていなかった。けど続けていくうちに、「いやいや、このままじゃダメだ。盛り上げていかないと」と思った。ただ、僕の場合は10年ぐらいかかっているわけで、裂固の歳でそれを言えるのはすごいと思う。

■裂固:たとえば東京なら、東京の中に渋谷とか新宿とかまちが細分化されていくけど岐阜と言ったらもう「岐阜」だから。中で対立するより、まずまとまら
ないと。

■亀丸:そうそう。都会だったら音楽のジャンルによってライブハウスも違うし、付き合う人も違ってくるんだけど、この岐阜をそういう風にはしたくない。僕は音楽を聴く立場、応援する立場としては、ジャンルには一切こだわっていないです。カッコいいと思ったら、どんなジャンルの音楽でも「めちゃめちゃ良かったね」と言えるようにしたい。泰斗a.k.a.裂固さんの話す様子

―亀丸さんが「柳ヶ瀬ants」を作られた理由として、若い人たちをサポートする気持ちもあったのでしょうか。

■亀丸:もちろんあります。岐阜のライブハウスで、若手を育てながら県外に行きたい時に(人などを)紹介したりしているのは、antsだけだと思いますよ。僕らはちゃんとそこまで面倒を見ます。たとえばLiSAちゃんは高校生くらいの時から知っていて、一緒にやってきた中で彼女の想いも知っているし、cinema staffというバンドもそうです。だからLiSAちゃんもcinema staffも、今でも岐阜を大事にしてくれていています。

■裂固:僕の中ではLiSAさんが岐阜出身と知った時はうれしかったです。大きなところで活躍するアーティストが岐阜から出たんだなと。岐阜の若い子はうれしいと思いますよ。

■亀丸:そうそう。そういう夢を与えてほしい。antsに来る若い子たちがやっぱり夢を持ってほしいというのはあります。「東京や大阪に出て行かないと」という考え方もあるけど、たとえばKUZIRAというバンドは今、岐阜に住みながら活動しているんですよ。「みんなが岐阜に来てくれるような、そういうバンドに僕らがなりたい」と言っています。

亀丸 一弘さんの話す様子 

岐阜で音楽をしていると、きっかけをもらえる。

―裂固さんとMOTIVEさんは2020年に「omniverse」というアルバムを制作されています。その経緯も教えてください。

■裂固:まず、僕がアルバムを作る時に、「1曲MOTIVEさんにお願いしようと」ということになったんです。その時にMOTIVEさんから送っていただいたサンプルがものすごい量で。しかもそれがカッコいい曲ばかりで、「これもやりたい、これも」という感じになりました。
結局アルバムに1曲入れたんですけど、その後、普通にアルバム単位でお願いしたいということになりました。MOTIVEさんから送られてくるビートが本当に幅広くて。

■MOTIVE:一回悩んじゃったもんね。スランプみたいになっているから、家に呼んで宇宙の話とかしながら「大丈夫やって」と。

■裂固:送られてきたビートの中に、いわゆるヒップホップ的なビートはあまりないんです。自分が関わったことがないようなビートが次々に来るから。そういう意味で、めっちゃ幅を広げてもらいました。

■MOTIVE:なんかさ、いつか聞きたいと思っとったんやけど。

■裂固:はい。

■MOTIVE:裂固が友だちにomniverseを聞かせたら、「遠回りしたね」と言われたって。

■裂固:それは、先輩のラッパーの方ですね。「いい遠回りをしたね」と言われたんです。通常、売れ筋というか、みんなが求めるものに自分が合わせる感じで売れる道を突き進んでいく人が多いと思うんですけど。その方が言っていたのは、「ちゃんと地元の先輩や、カッコいい音楽をやっている人とつながって制作するのは、いい遠回りだと思う」ということでした。

■亀丸:一見遠回りだけど、そういうやり方をするから自分の財産になってカッコいい自分が形成されるわけで。この先10年、20年と音楽をやっていくんだったら、大事なことだと思う。

■裂固:本当に、岐阜で音楽をしていると、いろんなきっかけをもらえます。BIG UP MY TOWNもそうだし、MOTIVEさんとの制作もそうだし。今まで岐阜でやってきた人たちが味わえていないきっかけを、自分はいただいている気がします。

■MOTIVE:それはもう、亀さんから脈々とね。

■裂固:間違いないです!

音楽の扉を開けて、
足を踏み入れてみる。

―裂固さんは、MCバトルの大会「KING OF KINGS 2022 GRAND CHAMPIONSHIP FINAL(以下、KOK)」で優勝されました。

■裂固:自分の中では「やっと取れた」という感じでした。「高校生RAP選手権」で日本一になったと言われていたんですけど、ちゃんと大人も含めたところで日本一にならないと、応援してくれている人に対して答えを出せていないという気持ちがありました。僕がアガることと岐阜がアガることは絶対につながるから、この日本一は大きな岐路になったと思います。

■亀丸:とんでもないことでしょ。

■裂固:今は僕を見てラップを始めた子とか、慕ってくれる後輩がいます。そういう後輩にカッコいい姿を見せていきたいと思います。

■亀丸:この3人とも本当に、ジャンルが違います。「岐阜で音楽をやっている」ということは同じでも、普段戦っている場所は違うんですね。裂固もMOTIVEも、それぞれの場所で先頭に立っていてすごいと思うね。バンドの世界で今の裂固みたいに表に出てきているのが、さっき言ったKUZIRAというバンドです。バンド界では「岐阜ってすごいね」という感じになってきてますよ。

笑顔を浮かべる泰斗a.k.a.裂固さん

―音楽に興味を持った若者が「antsで演奏したい」と考えたとして、亀丸さんはどう思いますか?

■亀丸:もちろん大歓迎です。高校生のコピーバンドでも出れるような企画をいっぱい用意しているし、まずはステージに立って何かを感じてほしいと思っています。さっきの裂固の話じゃないけど、みんなそこからのスタートなんですよ。ライブをやっては「今日もっとできたはずだったな、悔しいな」の繰り返し。自分も未だにそうだけど。

■裂固:思いますね。

■亀丸:たとえばバンドを始めるのって高校生くらいじゃないですか?そのくらいの子たちにじゃんじゃん来てほしいね。とにかく若者が原動力だと思っているから。バンドでもいいし、DJでもいいし、ヒップホップでもいい。岐阜で音楽の扉を開けて、足を踏み入れてみると、いろんなものが見えてくるから。「岐阜ってこんな人もいるの?」と分かってくる。たとえばMOTIVEは世界に向けて発信しているアーティストだけど、そういうところにもつながっていく。

■MOTIVE:僕はいつもこの店(MOTIVEさんが経営する「CAFÉ & BAR aLFFo」)にいるので、会いに来れる店があります。ただやっぱり、音楽だけにとらわれるんじゃなくて、映画をいっぱい見るとか、本を読むとか、そういうのが音楽に出ると思うんで。音楽だけをやっていても、人と一緒になっちゃうし。

■亀丸:そうそう。ライブができる店があり、そこに行くためにはカッコいい服を着たいし、いい車に乗りたいかもしれない。全部つながってるんですよね。antsでライブを見た帰りに「aLFFoに行こうよ」と寄って、充実した1日を過ごせるわけじゃないですか。そういう風にみんなつながってる。岐阜のまちも、そういう見え方になってほしい。「あの店もいいし、この洋服屋も好き」って。「岐阜、楽しいね」となるように、まずここを楽しいところにしたいという思いがあります。


Information

アルフォ

CAFE & BAR aLFFo(アルフォ)
「曲がり角のチルスポット」というコンセプトで、良質な音楽とともにおいしい食事やお酒を提供するカフェバー。DJ・アーティストによるライブイベントを定期開催している(本取材撮影地)。

営業時間・定休日は変更となる場合がございますので、ご来店前に店舗にご確認ください。

住所 岐阜県岐阜市八幡町33 三輪ビル 2F
TEL 058-215-0798
営業時間

12:00~翌1:00、日曜営業

定休日

水曜

営業時間・定休日は変更となる場合がございますので、
ご来店前に店舗にご確認ください。

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