iju interview

Vol.13(末松グニエ モルヴァンさん、文さん)

築50年の民家をリノベーション
夫婦で楽しむ手作りの暮らし
末松グニエ モルヴァンさん、文さん

末松グニエ モルヴァンさん、文(あや)さん

一軒の家との出会いが
岐阜市移住のきっかけに

岐阜市の中心市街地から離れた閑静な住宅街。フランス出身の末松グニエ モルヴァンさんと、愛知県一宮市出身の文さん夫妻は2022年の春からここで暮らし始めました。鮮やかなブルーが目を引く外壁や、流木の取っ手と小さなステンドグラスが施されたこだわりの玄関が訪れる人を出迎えます。

末松グニエ モルヴァンさん、文さん

モルヴァンさんが大好きなブルーで壁面を塗った。

10年間ほど空き家になっていた築50年のこの家と、末松グニエさん夫妻との出合いは移住の1年以上前、知人からの紹介がきっかけでした。当時、文さんの出身地である愛知県一宮市のアパートで暮らしていたお二人は、小牧市にある障がい者支援施設で働くモルヴァンさんの通勤の利便性を求めて、引越し先のアパートを探していました。モルヴァンさんの職場へのアクセスが良いエリアに絞り、不動産屋の紹介で7軒ほどアパートを内覧したものの、納得のいく物件は見つからず…。そんな中、知人が空き家として紹介してくれたのが、現在の住まいとなっている民家でした。

リノベーション前の様子。たくさんの荷物が残されていました。

リノベーション前の様子。たくさんの荷物が残されていました。

「初めて内覧に来た時は、かなり荒れた状態でした。夜の暗い時間帯だった上に雨も降っていて、本当にここに住めるのか…と躊躇するほどだったんです」。(文さん)

文さんが「今思い出してもひどい状態だった」と振り返るように、室内の荷物は残されたまま、庭の草木は伸び放題、アリや小動物の痕跡もあり、とても住めるような状態ではなかったといいます。しかし、モルヴァンさんが岐阜市の自然とまちの距離感が心地よいところを気に入っていたこと、庭付きの家に憧れていたこと、そして何よりリノベーションを得意とする大工の友人がいたことから、思い切って移住を決断することに。

友人たちも駆けつけDIYで行った壁面の漆喰塗りの様子。

友人たちも駆けつけDIYで行った壁面の漆喰塗りの様子。

ほとんど柱だけを残すかたちで、水回りの設備の位置を含め、間取りを大幅に変更。壁の漆喰は愛知県や岐阜県の各地から友人8名が駆けつけ、みんなでセルフリノベーション。1年間かけて空き家は二人の新居へと生まれ変わりました。

末松グニエ モルヴァンさん、文さん

暮らしにお気に入りを取り入れる

見違えるほどに様変わりした新居に、さらに個性を吹き込んでいるのが、絵画や一輪挿し、時計など、存在感のある作家ものの数々です。障がい者支援施設での仕事を通して、芸術の教育を受けていない人々による独自の表現“アール・ブリュット”に精通するモルヴァンさん、そして、フリーのカメラマンとして活躍する文さん。二人の感性で選ばれた作品が生活に彩りを与えています。

一宮市の家具店で購入した時計。窓からひょこひょこと覗く鳥が時を刻む。

一宮市の家具店で購入した時計。窓からひょこひょこと覗く鳥が時を刻む。

「作家さんのものを暮らしに取り入れているのは、モルヴァンの影響なんです。日本ではアートを飾る習慣がないけれど、フランスでは当たり前のように飾るんですよね」と文さん。リノベーション前から備え付けられていたという大きな本棚にも、本だけではなく、オブジェがいくつか置かれていました。

アール・ブリュットの作品をパターン化し、裏地とハンカチに施した夏用スーツ。

アール・ブリュットの作品をパターン化し、裏地とハンカチに施した夏用スーツ。

モルヴァンさんは自身もアート作品を制作しており、アール・ブリュットの作品を商品化して販売する仕事も手がけています。

かねてより縁のある岐阜県池田町、土川商店での個展「土川商店展」。

かねてより縁のある岐阜県池田町、土川商店での個展「土川商店展」。

文さんはカメラマンとして記念日のポートレイト写真や建築写真など幅広く撮影したり、最近では岐阜県池田町で昔から縁のあった「土川商店」の日常を題材にした個展を開催しました。お二人とも自宅の2階をアトリエ、作業場として活用しています。

文さんがライフワークとして撮影している尾州の生地工場の写真集。

文さんがライフワークとして撮影している尾州の生地工場の写真集。

鳥のさえずり、庭仕事、
暮らしのそばにある自然が魅力

「岐阜市のまちと自然が近いところがすごく好き」。(モルヴァンさん)
一宮市では市街地のアパートに暮らしていたため、日常的に自然を感じることが少なく、建物が壊され、まちの景色が変化することに心を痛めることもあったモルヴァンさんと文さん。岐阜市に移住してからは、朝夕に聞こえてくるさまざまな鳥のさえずりに癒されたり、庭で実った梅の実や八朔を自家製ジャムにして楽しんだり、自然を身近に感じながら暮らしています。

末松グニエ モルヴァンさん、文さん
最近では、モルヴァンさんが庭に手作りのコンポストを設置。モルヴァンさんが生まれ育ったフランスでは、何でも自分で作るDIYの精神が根付いていることもあり、お二人は日々暮らしを手作りしています。

末松グニエ モルヴァンさん、文さん
岐阜市には土着の文化が残っていて、住んでいる人たちの地域に対する深い愛を感じることも、魅力の一つだという文さん。自宅の近くには駅がなく、車がないと移動が困難な点は不便に感じることもありますが、それ以上に暮らしのなかの小さな幸せを積み重ねることで、お二人ならではの“岐阜市ライフ”を満喫しています。モルヴァンさんと文さんの手作りの暮らしはまだ始まったばかりです。


文さんの活動はこちらからもご覧いただけます。
文さんInstagram:@ayaguenier

実際のインタビューの様子はこちらの動画をご覧ください。

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