Live 04 / 地場産業
「1年目は苦しかったですね。えだまめをコンテナ何杯分も捨てました」。祖父の畑を受け継いで2015年に新規就農した、國井麻衣さん。しかし、野菜の栽培技術を教わる機会はなく、やっと収穫したえだまめは虫食いだらけだった。3年目、畑で仕事をしていると、突然こんな声が聞こえてきた。「そんなんじゃ、あかん」。声の主は、隣の畑で耕作するベテラン農家の男性。國井さんの就農以来、その姿を黙って見守ってきたが、見るに見かねて声をかけたのだ。思わぬ形で師を得た國井さんは、一から野菜づくりを学んでいく。この年、ようやく納得のいくえだまめを収穫することができた。
國井さんのような若い就農者は、岐阜市全体を見ても決して多くはない。また、女性の就農者が結婚などを機にやめてしまう例もある。國井さん自身、「若い女性が農業を続けられるのか」と何度も言われたそうだ。「だからこそ、私は長く農業を続けたいと思っています。うちの従業員は全員女性ですが、それは『女性だけでも農業ができることを見せたい』という意地でもあります」。
農業は、自然災害のリスクと隣合わせの厳しい仕事だ。一方で、野菜に愛情を注ぎ、その変化を感じる喜びもある。
「野菜はいろんな反応を見せてくれるので、育てていて楽しいです。また、正解がない中で自分なりの道を見つける楽しさもあります。そして一番うれしいのは、食べた人に喜んでもらえた時です。何か月もかけて育てた野菜を『おいしい』と言ってもらえると、『そうでしょ!』と胸を張って言いたくなります。自然とともに生きるって、いいですよ」
■ 國井麻衣さん
東京農業大学を卒業し、2014年に地元の岐阜市に帰郷。2015年からは祖父の畑を受け継ぎ、えだまめ、ほうれんそう、かぶなどを栽培する。
【インスタグラム】 @maikunii
投稿日:2021.12.27 最終更新日:2023.12.07