時代を次へつなぐ人 03
Connect The Next Gifu 03
「長良泉」を通して、
長良の魅力を知ってほしい。
75年の時を経て復刻されたお酒
最後に向かったのが、長良の老舗酒店「樽綱本店」。後継者の神谷高旭さんに話を聞いた。前職の旅行会社で観光案内を経験してきたこともあり、その語り口はなめらかだ。「うちは岐阜のお酒に特化した店です。蔵元さんに行って味を確かめ、『自信を持ってお客様におすすめできる』と感じたお酒だけを仕入れています」。
江戸末期創業の樽綱本店は明治初期から酒造りを始め、「長良泉」という銘柄のお酒を販売していた。だが昭和に入り戦争が始まると、酒造りの歴史は途絶えてしまう。その後、70年以上にわたって酒屋として歴史を歩んできた。 ところが令和を迎える頃、ある出来事が起きる。高旭さんの父であり現社長の登貴彦さんが納戸を掃除していたところ、長年人の目にふれてこなかった長良泉のラベルが見つかったのだ。「『よくぞ出てきてくれた』と感動し、この機会に長良泉を復刻しようという話になりました」。製造を依頼したのは、市内の蔵元・日本泉酒造。原料の米は岐阜県産「ひだほまれ」「はつしも」、仕込み水は長良川の伏流水を使うなど、「岐阜産」に徹底してこだわった。
「どこでも買えるお酒ではなく、岐阜に来てくださった方や本当に良いものを探している方にご提案し、岐阜の地酒を知っていただきたいと思います」。2020年春、75年の時を経てドラマチックに復刻された長良泉は、長良地区の歴史や風土を物語るお酒だ。その味を楽しみながら往年の長良の様子や美しい自然に思いを馳せていただければと、高旭さんは熱い口調で語る。「受け継いできた歴史を知っていただき、長良の魅力を伝えることが私の役割だと思っています」。
PROFIELE
神谷 高旭さん
旅行会社勤務を経て、実家の「樽綱本店」で働き始める。樽綱本店は、厳選した岐阜産のお酒のみを販売。高旭さん自身も県内の酒蔵に足を運び、酒造りの現場を確かめながら仕入れを行う。2020年春に樽綱本店とその仲間が復刻した「長良泉」の魅力発信にも力を注いでいる。
時代を次へつなぐ人
投稿日:2025.01.23 最終更新日:2025.01.23